菜園からの景色(2024年6月撮影)
2024年08月 - 田舎の食生活について
気が付けば2024年も半年以上が過ぎてしまいました。実際には、原稿を書き始めてからすでにひと月半が経過しています。還暦を迎え、細くなる川の流れのごとく時の流れはどんどんと速度を増しています。急流の中でほとんど気を失っていたのかもしれないというほどの時間が経ってしまいました。そういったわけで新規投稿が滞りまして、一部の方々にはご心配をおかけいたしました。小生、いたって元気です。例年通り菜園や庭の手入れなど、家の周りのことに忙殺されています。いや、本当は手を抜いてのんびりしているので、いろいろなことが一向に進んでいません。
とりあえず、新年(?)一つ目の話題は、田舎の食生活についてにしたいと思います。
移住してから5年目になりますが、これまで旅行以外で外食をしたことがありません。外食しないのは近隣に店がほとんど無いということもありますが、家で食べたほうが気を遣わずに好きなものを好きなだけ食べられるし、お酒も飲めて帰りの心配もいらないからです。そして、おいしい! 家内曰く、高いお金を払って食べに行く必要はない、と。東京で暮らしていた当時、下調べしたうえで新規開拓した9割の店は納得のいくものではありませんでした。私の経験則は「行列のできる店にうまい店はない!」というものです。あと「テレビで紹介された店に良い店はない」というのもかなり当たります。少し考えればわかりますが、本当に良い店を不特定多数に紹介するはずはないのです。混むことによって自分が行きづらくなるのだから。そして店に行列ができるのは、混んでいても待つしか選択肢を持たない、遠方からの来訪者が多いからで、テレビで放映された直後は行列になっても、ほとぼりが冷めると行列はなくなるのです。行列がなくなったら行こうと思っていて、店が無くなってしまうということも多々ありました。その程度のものだと思うのです。
ここにきて、いよいよ生涯で摂れる食事の回数も残り少なくなってきたので、お金を払って美味しくないものを食べさせられたり、不快な思いをするというリスクを取ることをしなくなってきた、ということも外食をしなくなった理由のひとつです。この歳になると、おいしいものとは奇をてらった新しい料理ではなく、懐かしい昔ながらの味なのです。思った以上に精神の老化は進んでいます。
さて、当然、宅配のピザやお寿司などは配達圏外ですから、食べたいときには自分で作るしかありません。というわけで、我が家ではピザやお寿司は好きな具材をのせて手作りします。幸い良い食材が比較的容易に手に入ります。伊達のスーパーまで行けば、噴火湾や近海の新鮮な海の幸が手に入ります。お寿司やお刺身なら甘えび、ホタテ、マグロ、しめ鯖などがあれば十分で、地元のホッキ貝やウニ、イカが手に入ることもあります。足りなければ自家製いくらのしょうゆ漬け(各方面で非常に好評ですが、それは、また別のお話)もあります。巻物用には菜園で採れたキュウリや自家製の梅干しと生姜の甘酢漬けもあります。お寿司は一度に大量に握るので2~3日分にはなります。
東京にいた頃に、半日の寿司講習を受講したことがありました。そこでアジの三枚おろしとお寿司の握り方、巻物の作り方を学びました。それ以来、家で魚をさばいたり、寿司を握ったりしています。築地まで自転車で20分の距離だったので、週末には買い出しに行って良いネタがあれば寿司を握っていました。何でも経験しておくものです。
講習のテキスト
講習で作ったお寿司。ネタが用意されていて、アジを捌いて巻き寿司に、赤貝を捌いて握りにという具合。あら汁がついて、これが昼食になります。かなりリーズナブルな講習でした。
2024年2月のお寿司
自家用なので見栄えは良くないですがネタは新鮮です
2024年6月のお寿司
珍しく噴火湾のウニが手に入りました
お隣からいただいた新生姜
自家製、生姜の甘酢漬け
ピザは北海道産の小麦粉を使ってピザ生地から作るようになりました。いまだにピザ生地についてはいろいろなレシピで試行錯誤中ですが、菜園で採れたミニトマトとバジルを使ったマルゲリータは外せません。今年はトマトソース用のトマトも栽培しています。
裏庭にレンガで炉を作っていたのですが、みなさん、ピザ窯ですかと聞かれます。いえ、ただの炉です、焚き火用の。ピザ窯は大変ですからね、オーブンの方がおいしく焼けると思います。有名店ではピザ窯をイタリアから輸入したり、ピザ窯の職人を招聘したりするくらいですから、素人が手を出すべきではないと思うのです。
セミドライトマトが焦げたマルゲリータ
ピザ窯ではなく、ただの炉です
近所にパン屋が無いので、家内はパンも自分で焼いています。多分、材料が良いせいもあると思うのですが、とても美味しく出来上がります。今ではパンを買うこともなくなりました。パンの他にも菜園で採れたイチゴや近所の果樹園で購入したブルーベリーを使ってマフィンを焼いたりケーキを作ったり、近隣のたまご農家から購入した平飼い有精自然卵の「たつかの恵み」を使ったシュークリームやプリンなども作っています。他には庭で採れた栗を使って栗羊羹やモンブランも作っていました。
いつも試作だといって食べさせられる、いや、食べさせていただけるので、どんどんとお腹が出てきます。農作業や雪かきだけでは相殺が難しくなってきています。
白パン。全粒粉や胡麻パンのことも、
ブルーベリーマフィン
「たつかーむ」の卵。直接買いに行くと規格外や大玉のものを割安で買うことができます。大玉は黄身が2個入っていたりします。
ハンバーガーも作ってみました。近所にバーガーショップもないので。
庭の栗を使った栗羊羹
庭の栗を使ったモンブラン
栗のプリンとケーキ(栗が豊作だったので)
シュー栗クリーム
ロールケーキ
菜園で採れた不揃いイチゴのケーキ
おいしいものの話としてどうしても触れなければならないのは、移住して来てすぐに近隣の農家さんからいただいたミニトマト(「2020年10月10日 - 自治会長のミニトマト」)のことで、それはびっくりするほど濃厚な味わいで、いまだにこれを超える驚きには出会えていないのですが、その農家さんは後継者の問題で昨年でトマト栽培をやめてしまいました。そのすばらしい最後のトマトを味わえたことは幸運なことで、これだけでも移住した甲斐があったとさえ思っています。
もうひとつ、ここでしか味わえないのは枝豆です。「枝豆はお湯を沸かしてから採りに行け」と言われるほど鮮度が落ちやすいのですが、ここではそれを実践することができるのです。しかも、栽培している品種がダダ茶豆系のもので、これまで食べた枝豆の中で最もおいしく甘くて深い味わいなのです。今年もあと1か月くらいで収穫の季節です。
菜園で採れたジャガイモ(とうや)もおいしく、バーベキューの時にホイルに包んで炭火で焼くのは絶対ですが、キュウリと自家製らっきょの甘酢漬けを使ったポテトサラダも絶品です。ポイントはらっきょ汁と砂糖を少し入れるところです。
驚愕のおいしさだったミニトマト
自慢の枝豆
畑で採れたもの以外にも、隣町のブランド牛、白老牛というのもあります。ブランド牛ではないですが、リーズナブルな白老和牛というのもあり、これを使ったすき焼き(もちろん、市販の割り下など使わず、砂糖、しょうゆ、お酒だけで味付けします)も最高です。自分の好きなように具を入れられるので、高級すき焼き店よりも満足度が高く、外食の必要性を全く感じさせません。もちろん、卵は「たつかの恵み」です。
食と言えばバーベキューは欠かせません。冬の間でさえ、晴れて風のない日には外で魚介や肉を焼いたりします。焼き鳥などもしていましたが、今は串には刺しません。食べるときには串から外すのだから、刺す手間と外す手間を省いてそのまま鶏肉を炭火で焼きます。塩、コショウ、あるいは唐辛子をかけるのですが、これが結構おいしいのです。さすが炭火焼の威力です。
雪の中でもバーベキュー
気が向いたらすぐにバーベキューができるのが幸せ
先日は、ご近所さんから鹿肉をいただきました。昨年、移住してきたご家族で狩猟免許を取得して鹿撃ちをしているのです。自分で肉を熟成させたということで、今まで食べた鹿肉とは違い、癖も少なく柔らかい美味しい赤身肉でした。最近は鹿の被害(作物が食べられたり、車に衝突したり)が増えているので、獣害対策とジビエとしての活用という両面でありがたい存在です。
ここに越して来てからは、材料にお金をかけ(それでも外食に比べればずいぶんと安いですが)、そして作ることに時間をかけるという贅沢な暮らしをしています。
東京で暮らしていたころ、お気に入りの居酒屋が閉店し、居心地の良かった寿司屋も別店舗に併合され、通っていたラーメン屋も知らないうちに違うのれんになっていたりして、自分たちのお気に入りが少しずつなくなって、好きな味が失われていくことに憤りを感じる日々でした。そこで、無いものは自分で作ろうと思い、いろいろなことを始めました。そして、それを実践するための環境を整えるということも、引っ越しを決意した理由のひとつです。
今は自宅が寿司屋、ピザ屋、居酒屋、そしてバーベキューエリアです。さんざん、呑んだ翌朝には、晴れていれば外でカップメンを食べたりします。なにせ、残された食事の回数は限られているのですから。